神崎葵ちゃん。 神崎アオイの誕生日や年齢は?実はかなり若い?

【オサカナ】神崎風花がかわいい!年齢や身長や出身は?高校はどこ?

神崎葵ちゃん

神崎君の学年が30歳の節目で、聖石矢魔行き組が同窓会をするお話です。 グッドナイト下川視点で、彼がMK5や姫ちゃんなどかつての仲間と再会したり、久しぶりに会う葵ちゃんにドギマギしたりしますが、神 夏 で す。 数年前に流行った『ずっと好きだった』という歌を聴きながら書きました。 歳を重ねた彼らの変わったところ変わらないところ、ワイワイ感を楽しんで頂けたら幸いです。 30歳の神崎君は渋みが出てとてもかっこいいんだろうなーと思います。 あと、夏目が卒業後絶対姿をくらます感、アレ何でなんでしょうね……。 その言葉はずるくて、筋が通らなくて、言わない方が平和で……でもだからこそ、とびっきり甘く切実に響いた。 離れてからは九年経つが、盆と正月はまめに実家に顔を出している。 暮らす街ではなくなってからも恩義を尽くしてきたのだ。 オレの街はここであること、誰にも文句は言わせない。 「石矢魔高校聖石矢魔クラス同窓会にご参加の方でしょうか」 「は、はい」 勝手知ったる庭にも、足を踏み入れたことのない場所がある。 都会とは呼べない中途半端な街に場違いにそびえ立つ、この高級ホテルがそうだ。 新しくできたわけじゃない、オレがガキの頃からある。 でもこんな機会がなきゃ、一生縁がなかっただろう、ちくしょう。 「恐れ入りますがお名前を頂戴してもよろしいですか」 「し、下川です、すんません」 何で謝ってんだろうオレ。 値踏みするような眼の受付の男に頭を下げながら、すぐ調子乗るくせに小心者なんだから、と笑われたことを思い出していた。 「うおーい下川久しぶりじゃーん!」 「うっわびっくりした! 碇か!」 まだ始まっていない会場で所在なくしていたら、いきなり後ろから背中をはたかれた。 ふり返るといたずらっぽく笑うなつかしい顔。 碇だけじゃない、MK5の面々が代わる代わる肩に腕を回したりどついたりしてくる。 「専門出てから下川お前全然連絡よこさねーんだもん」 「フフッ、さみしかったかい?」 「「「「「いや別に」」」」」 「空気読めよ相変わらずだな!」 「お前だって相変わらずキモイっつの! 県外出たんだっけ、何してんの」 「あー、営業?」 「キキッ、なんで疑問形よ。 つーかオレ達もみんな営業だぜ」 「えっそうなの」 「……高校で土下座し慣れたから、って噂ある」 オレ達の頃の石矢魔生、外回り営業率高いらしい。 真顔で言われて思わず納得してしまう。 そんな風に近況を教え合っていると、しだいに人が揃い始めた。 隅ではレッドテイルが集まってはしゃいでいる。 色とりどりのワンピースが華やかだ。 「お、そろそろ始まんのかな」 「……そうだな」 「オーイ下川さっきから何きょろきょろしてんだよ」 「え? あ、いや緊張するよやっぱり、こんなとこ来ないし」 「だよなー、姫川サマサマだよな」 噂をすれば、とマイクの前に主催が現れたことで、とっさのごまかしは突っ込まれずに済んだ。 居住いを正すふりでさりげなく、ポケットに手を入れる。 「あー、今日はそれぞれ忙しいとこ集まってくれたことに感謝する。 代わりっちゃなんだが、好きなだけ飲み食いしてってくれ」 「姫川先輩まだその頭してんスかー?」 「おー花澤、相変わらずパーな顔してんな。 さすがにリーゼントじゃ社長はできねえのよ、今夜だけ限定復活だ」 さっそく皿いっぱいに料理を乗せた花澤が、復活しなくてもいいのにと至極真っ当な意見を言う。 怒鳴り返す姫川は、昔のかっこうをしているせいもあって、三十歳にはとても見えない。 今回の同窓会はオレの上の学年が三十になる節目で開かれた。 幹事の姫川がどうせなら馴染みの顔ぶれでってんで、聖石矢魔クラスだったメンバーを集めたのだ。 だからオレの学年も花澤の学年も参加している。 「まあお前らも普段は石矢魔の頃のままってわけにはいかねえんだろうけど、今日はそういうしみったれた話はナシだ。 建物破壊以外なら何でも許す。 思う存分学生時代に戻ってくれ、以上」 乾杯はもっと適任がいるから代わる、と姫川が引っ込めば、入れ換わりで壇に上がった姿にどっと笑いが起こる。 なんでオレが、とぼやきながら現れたのは神崎だ。 髪を黒くしピアスもなくてだいぶ落ち着いたが、ぶすくれた表情にガキ大将の名残がのぞく。 「ちっ、めんどくせえな……オラ全員グラス持てグラス。 あー、会場壊すのだけはあいつマジでべそかきやがるからナシだが、それ以外思いつく迷惑は全部かけてやろうってことで」 おー! とこんな時だけ一致団結する面々に、ふざけんなと姫川の半ば本気の罵声が飛んだ。 けちくせえな、なんて神崎は笑って自分のグラスを持ち上げる。 「つーわけで乾ぱ……ってあっオイてめえ!」 音頭が直前で放り出され、全員ずっこける。 神崎はグラスの中身がこぼれるのも構わずステージを飛び降り、会場の入り口まで駆け出した。 姫川が苦笑いでとり直した乾杯に合わせながら視線を送れば、ひょろ長い男が神崎に胸倉をつかまれ揺さぶられている。 ごめん許してと眉を下げる表情には覚えがあった。 ああ夏目か、肩まであった髪があごのあたりで揃えられてるから一瞬わからなかった。 ていうかあいつ若すぎだろ、学生にしか見えなくて、その変わらなさはうらやましいより心配になるような感じだった。 「夏目って高校出てからずっと行方くらましてたんだって」 「へー……」 遠くでも眼を引くふたりを眺めてたら、嶋村が少し背伸びして耳打ちしてきた。 姫川が無理やり引っ張ってきたらしい、十年以上ぶりの再会。 神崎が怒るわけだ。 「……いなくてこんな騒ぎになるの、さすがだよな」 「なんだよ下川、ブルーかよ」 「いやマジで、だって君ら今日オレ来なくてもあーそうなんだってだけでしょう」 「「「「「まあな」」」」」 「そこは空気読んで否定しよう!?」 神崎に怒鳴られるままの夏目に、城山がつかつかと歩み寄る。 助けて城ちゃん、とふざけるも無言で頭をぶん殴られていた。 いつの間にかステージを降りた姫川は、花澤や谷村をからかってにやけている。 その横で東条が一心不乱に料理をタッパーに詰め、相沢と陣野に苦笑されていた。 聖石矢魔クラスは三十人近くいて、どうやらほとんど来ているようだが、盛り上がりの中心はやはり華やかな退学組の連中だ。 「……働きアリの法則って感じだよな」 「下川がおかしくなったぞ! 飲ませろ!」 君らね。 働くか働かないかならほぼ全員が働かないアリだが、そういうことじゃなくて。 テレビで見たことある、アリのグループは8割が働きアリで、2割がさぼるアリ。 そのさぼるアリだけを取り出すと、その中の8割が働き始め、2割はやっぱりさぼる。 またそのさぼるアリを取り出せばやっぱり8割が……そのくり返し。 石矢魔にいるうちなら、オレは辛うじてその他大勢じゃなかった、2割にぎりぎり滑り込めた。 けどその2割だけが集められた聖石矢魔クラスでは、その他大勢だった。 神崎とか夏目とか……男鹿とか、それでも2割の中でもやっぱり2割になれる奴ってのはいて、そういうことを認めなきゃならないのがオレはちょっと嫌だった。 どんどん網目が大きくなるふるいのことを、ふるい落とされる自分のことを。 石矢魔のままだったらよかったのに、と思うこともあった。 けど、聖石矢魔になってうれしいこともあった。 「あっ姐さん!」 大森の声に思わずびくりと肩が跳ねる。 入口に佇む深いブルーのワンピースの姿は、遠くでも輝いて見えた。 「邦枝なに立ち止まってんだ、とっとと入れよ」 「う、うるさいわねっ」 「って何で姐さん男鹿と来てるんスか!」 続いてふてぶてしい下級生が顔を覗かせる。 どういうことだよ、もしかしてそういうことかっと一気に会場がどよめきたった。 「ちっ、違うわよ変な誤解しないで! あたしたちは偶然そこで会っただけで、ねえ男鹿!」 「おー、オレは……」 「皆さん安心して下さい、男鹿はオレと来ました!」 邦枝先輩とは何もありません、とどや顔で主張する古市に、ふざけんな、お前はほんとしょうもねえなとなぜか非難が集中する。 ひと通り古市をけなし終わってみんな満足したのか、葵ちゃんはレッドテイルに、男鹿達は東条や姫川の輪へと混ざっていった。 なめらかな素材のワンピースに浮かび上がるきゃしゃな腰のライン。 さらさらの黒髪は結いあげて、覗いた首筋はうっすらと赤らんでいた。 昔のかたくなな感じが取れてやわらかくなった横顔。 でも浮ついた誤解が簡単にとけてしまったこと、こっそり残念がるようななつかしい表情が浮かんでいる。 ああ、君はやっぱり。 「邦枝なんか色っぽくなったなー」 「オイオイ葵ちゃんをそんな眼で見る奴はオレが許さないぜ?」 「よく言うよ、下川が一番がっついてたくせに」 「そういうのじゃないって」 「へーへー、話してくれば。 せっかくだし」 「いいって、何しゃべっていいかわかんないし」 「グッナイって言えばいいじゃん」 いいじゃんじゃねーよ、会話終わるだろ。 いったいどんなキャラを作ろうとしていたのか、高校時代の自分の気持ちは今となっては全くわからない。 恥ずかしさのポイントはそこじゃないけど、せめてグッモーニンとかハローとかにしておけばよかった。 おやすみなんて別れのあいさつは、ふたりっきりで言えるタイミングなんて結局来ないままだった。 「邦枝先輩、相変わらず綺麗ですね」 MK5と離れ、テーブルに置いた皿に料理を取り分けているとそんな言葉が耳に入った。 顔を上げれば古市が葵ちゃんに話しかけている。 なんか変なこと言ったら殺すぞというような大森達の視線もなんのそのだ。 「そ、そう?」 「ええ、そのワンピースもとてもお似合いです」 葵ちゃんが顔を赤らめながらちらちらと眼を送るのは、褒めてる古市じゃなくてその隣だ。 あさっての方向を向いて間抜け面でメシ食ってる男鹿。 ほっとしたようにがっかりしたようにつく深いため息が好きだった。 切ない片思いをしているのはこの世に自分だけみたいな。 その眼が自分を映さないこと、悔しかったけど、その間だけは彼女を見つめることが許された。 ずっと見ていた。 「ただ丈が長くて太ももが見えないのが残念です。 相変わらず細いんですか、 それともむっち」 真顔の変態発言は大森の鉄拳制裁で遮られる。 オレががっついてたなんて濡れ衣もはなはだしい。 変な眼で見る余裕なんて全然なかった。 聖石矢魔に移ってその他大勢に格下げになっても、うれしいことはあった。 葵ちゃんの前の席に座れたこと。 生真面目にシャーペンを走らせる音や、時々手を止めて伸びをする気配なんかにいちいちどきどきして、もともと興味のない授業はますます耳に入らなかった。 いくつもの段階をすっ飛ばして付き合ってとか何度も言って困らせたけど、それで伝わるなんて思っていたわけじゃなかった。 前に座るだけで背中がじっとり汗ばむような純情じゃ、眼が合うと焦って普段のきざな台詞なんて飛んで行った。 本当はもっと綺麗だねって言いたかった、ぐきゅうと変な声を上げて倒れ伏した古市みたいに、呆れるほど正直に下心丸出しとまではいかなくとも。 「……っ」 少し遠くから葵ちゃん達を見つめていたら谷村に気づかれた。 何か用ですか、とでも言うように首を傾げるから、何もないよと右手を振って、風に当たりに会場から続きの庭に出た。 [newpage] ガーデンパーティに使われることもあるという庭は散策できるほどの広さだ。 ライトアップは今日は切られているが、代わりにひるむくらい近くて大きい月が冴え冴えと照らす。 酔いざましがてらふらふら歩いていると、誰か話しこんでいるのにはち合わせた。 「びっくりした、神崎くん大人っぽくなってんだもん」 「ぽくじゃなくてとっくにいい大人だろーが。 お前が変わんなすぎんだよ」 夜の庭にワントーン濃い影を落としているのは、神崎と夏目だった。 何やってんの君たちと割って入ってもいけないことはないんだけど、照れの混ざったどこか甘い声音にひみつの匂いを感じてとっさに木陰に身を隠した。 たわいもない軽口からしだいに切なさを帯びていく言葉は詰まりがちで、よく聞き取れないけれど。 「……何でオレ今日、来ちゃったんだろう」 並んで空を眺めていたのを夏目が向き直って、神崎の黒いジャケットの肩口にことりと額を預ける。 困り果てたように苦しげに眉を寄せて、眼を伏せて。 夏目の方がでかいからおじぎをするような姿勢になって、ひどく不格好だった。 いつもひょうひょうとしている、と思っていた。 会場の喧騒は遠く静かな夜空に古いラブソングは響き渡って、弾かれたように夏目が顔を上げかける。 「……ほっとけ」 棒立ちだった神崎が夏目の後ろ頭に腕を回し、ぐっと抱き寄せた。 オレは慌ててボタンを押しメロディーを止めて逃げるように立ち去ったから、 「……ずっと好きだった」 そのしぼり出すような言葉が、どちらのものかはよく分からなかった。 「もしもし、あーうん、そう。 今同窓会、高校の。 うん、すごい豪華なとこ……え!? ないない! だって来週こないだ決めたとこ、本契約しようって話だったでしょうが! いや、ほんと無理だって、オレだって今日初めて来たくらいなんだってば、地元なのに! ね、あー……うん、後でまた電話するわ、おやすみ」 会場でする話じゃなかったから、神崎たちからできるだけ離れて電話に出た。 思いもよらない方向に進んでしまった話にどっと疲れて、切った途端にため息が漏れる。 ふと木々がざわめくだけじゃない気配に気づいてふり返ると、夜風がブルーのワンピースを揺らしていた。 「……葵ちゃん」 「久しぶり。 千秋が、話したいことがありそうだったって言うから探してたんだけど」 谷村の気づかいはありがたいけど、酔っているのか濡れたようにうるんだ真っ黒な眼にまっすぐ見つめられれば、話すことなんてひとつも浮かばない。 古市と同じように、その服似合うねとか? あいつは何もわかってない、少し長めの丈はきゃしゃなひざ小僧を見え隠れさせてぐっと胸が詰まる。 相変わらず綺麗だね? 潔癖そうだった高校時代の横顔も、少しやさしい感じになった今の笑みもそれぞれ綺麗で、まとめてしまうのは乱暴すぎる気がした。 結局口をついたのは、子どもが見かけた看板を片っ端から読み上げるようなひねりのないものだった。 「……月が、綺麗だね」 「何それ」 我ながらもうちょっとくらい気の利いたこと言えよって肩を落としたのに、葵ちゃんはなぜか少し顔を赤らめ、すねたようにうつむいた。 そして突然物騒なことを言い出す。 「死んでもいい、って言ってほしいの?」 「……え?」 わけがわからなくてぽかんとしていると、知らないで言ったの? と呆れて説明してくれる。 昔の人が訳したアイラブユーの話。 そういえばそれこそ高校時代に、たいして盛り上がらなかった話題のひとつで聞いたことがあるかもしれない。 「ごめん、びっくりさせたよね。 そんなつもりじゃないんだ……綺麗だと思ったんだ。 本当に、ただ」 向き合っただけで胸がいっぱいになって、浮かぶ言葉といったらそれくらいだった。 飲み会で浮かれた夜も、上司にむかついた帰り道も、月なんていつだって出ていて、取り立てて綺麗だって意識することなんてなかったのに、ふいに、すとんと落ちるようにそう思った。 「ふふっ、そうね、本当に綺麗だものね……そういえばさっき二次会行くか姫川が聞いて回ってたわよ。 ずっとこっちにいたなら知らないでしょう」 「……葵ちゃんは?」 「私は帰るけど。 どうせ男子だけで盛り上がるんだろうし、寧々たちとも別に行くって話はないし」 「そっか……」 ずっと好きだった。 神崎か夏目かわからないけど言っていた。 突き放す声は聞こえなかったから、言われた方も受け入れたんだろう。 あいつらがどっちも男だということはとりあえず横に置いて、その言葉の意味を考える。 ずっとと言ったけど、それは間に誰も愛することなく思い続けてきたってことだろうか。 それとも誰と付き合おうと忘れられなかったのか。 好きなのに会わなかった十数年には、オレには知り得ないけど会わなかった理由がきっとある。 夏目がどうして来ちゃったんだろう、と言ったように、会わないことで守っていた何かがあるはずだった。 ずっと好きだった。 その言葉はずるくて、筋が通らなくて、言わない方が平和で……でもだからこそ、とびっきり甘く切実に響いた。 「もし……絶対帰らなきゃいけないんじゃなかったら、どっかで飲み直さない?」 ふたりだけで。 上擦る声で念押しすると、葵ちゃんは少しの間眼を丸くした後、ふっとくちびるを上げてほほ笑んだ。 誘っておいてなんだけど、逃げ出せるボタンがあったら連射したくなるほど胸がばくばく跳ねていた。 「そうね……じゃあ、グッナイってしてくれたら考えようかな」 「……っ」 ぎくりとしながら上げかけた右手は、そっちの手で、とぴしゃりたしなめられた。 観念してポケットに入れっぱなしだった左手を、指をそろえてこめかみのあたりに添える。 「……葵ちゃんにはやっぱり、敵わないね」 「ふふっ、おめでとう」 いつかみたいにバチンとウィンクなんてできなくて、ただお見逸れしましたのため息がもれるだけだった。 でもその代わりに、闇にきらりと銀が光ったはずだ。 最後に磨いたのはいつだか思い出せない古いリングでも、きっと。 「正確にはまだだよ。 彼女にはこないだ婚約指輪渡したけど、オレのは付き合いたてに買った安いペアリング」 数カ月分の給料を持って向かった宝石屋。 そのお値段ですと、と見せられたダイヤは、テレビで見るようなものよりずっと小さくてがっかりした。 なんだよ、こんなに頑張って貯めたのにこんなしょぼいのしか出てこないのかよって。 「だからオレが指輪してるとは限んなかったのに。 してなかったらOKしてくれたの?」 「電話してるの、聞こえてたから。 大事にしてる人がいるんだろうなあって思ったの。 彼女、かわいい?」 そのへんの女の子が束になっても敵わないほどかわいい顔で、しかも十数年もずっとかわいいと思い続けてきた男に、そんなことを無邪気に聞く。 葵ちゃんは隙だらけだ。 そんな隙をほっとけないと、愛しいと思ってしまう。 でもほんとのところ大森や谷村なんかがっちり守ってる取り巻きがいるから、そんな思いは男の勝手でしかないんだろうけど。 「いや、葵ちゃんの方がずっとかわいいし綺麗だよ。 でも……彼女はオレのことが好きだ」 小さくてがっかりしたダイヤ。 でも夜景の見えるレストラン、震える手で彼女の指にはめれば、涙が出るくらい綺麗だった。 ていうか本当に泣いて、何であんたが泣くのよって小突かれた。 ずっと好きだった君はオレを好きになることはなかったけど、彼女はオレが好きだ。 すぐ調子に乗るくせに本当は小心者だってことも、宝物見つけたみたいに笑う。 それだけで十分だった。 受け入れられただけで、十分過ぎるくらいに十分だった。 「……素敵ね」 眼を細めた葵ちゃんの表情はほんの少し泣きそうに歪んでいた。 君は幸せになったんだろうか。 それともまだ、オレの後ろの席で隣をちらちら盗み見る、十六の君のままなんだろうか。 あんな鈍感野郎やめちまえばいいのに、そんでオレにすればいいのに。 心の中の君を思う場所は、きっといつまで経ってもゼロにならない。 それでもオレじゃダメなんだろうね。 「あ、お前らこんなとこいたのかよ、探したじゃねーか」 一次会はお開きになったのか、しばらくすると姫川が男子を連れて庭に様子を見にやってきた。 「下川お前二次会行く?」 「あ、じゃあ行こうかな」 「くっ、何だよ慌てて。 なんか聞かれてまずい話でもしてたのか?」 「違うわよ!」 「へーへー、あーそうだ古市、せっかくだからツーショット撮ってやれよ。 下川後で送ってやっから」 カメラ係を押し付けられたらしい古市が、下川先輩見切っちゃっていいすか、と真顔で言う。 本当にやりそうだからやめろ。 じゃあ何かポーズ撮ってください、と促されてまごついていると、隣に並んだ葵ちゃんがいたずらっぽく笑って裏ピースを作った。 「おっ、超レアだぞ邦枝のグッナイポーズ」 「オイ下川何お前が照れてんだ、元祖グッナイ見せてみろって」 「……ハイハイ」 やけっぱちで上げた左手に、予想通り歓声が上がる。 ツーショット撮影はどこへやら、あちこちからコノヤローうらやましいとどつく腕がのびてきて、葵ちゃんは声を上げて笑った。 姫川のリーゼントはもみ合う中で崩れかけていた。 さっきまで苦しそうな顔で話していた神崎と夏目も笑っていた。 どんな眼で見ていいかわからなくてまごついていると、様子に気づいた夏目が言いふらしたら殺す、と耳打ちしてきて背筋が凍った。 城山が胴上げをするのはどうだろうか、と完全に酔ってすわった眼で提案して、タッパーを放り投げてよっしゃ、と腕まくりした東条に、相沢と陣野が相変わらずだな、と呆れていた。 男鹿は興味なさそうにそのタッパーの中の料理をつまんでいて、古市もお前なあ、とため息をつきながら手を伸ばしていた。 「グッナーイ! グッナーイ!」 誰が言い出したのか、バンザイでもワッショイでもなくグッナイでオレは宙に放り上げられた。 力自慢の男たちの胴上げはバカみたいに高くて、綺麗な月まで届きそうだった。 よしじゃあ撤収二次会移動! と唐突に落っことされるのもお約束で、でも不本意ながら地面を這うのは慣れている。 スーツについた土をはらって、オレも今夜は飲もう、君は帰ってしまうけど。 酔っぱらって電話するのが遅れたら、彼女は怒るだろうな。 でもこの分不相応にもほどがあるホテルで、結婚式上げてみたいなんておねだりを叶えるべく姫川に交渉してみよう。 もちろんお友達割引で。 帰ったら月が綺麗だねって言ってみよう。 君と見る月が一番綺麗なのは墓までひみつにして、アイラブユーって伝えるために言ってみよう、彼女に。 どこで覚えてきたのって、笑われるかな。 [newpage]長いお話をここまで読んで下さりありがとうございました。 もしよろしければ簡単なアンケートを設置しましたのでぜひご協力頂けると幸いです。 fc2.

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神崎アオイ (かんざきあおい)とは【ピクシブ百科事典】

神崎葵ちゃん

回復訓練でのたちへの指導から、厳しくも優しい性格が窺えます。 容姿 黒髪はツインテールに結われており、蝶の髪飾りを付けています。 鬼殺隊隊士であるため、隊服を着用していますが、隊士の治療などを行うことから、隊服の上から看護服を着用しています。 神崎アオイの役割 蝶屋敷で負傷した隊士の治療したり、復帰訓練のサポートを行ったりと、裏方としての役割を担っています。 薬学に精通するしのぶの下で薬学の勉強をしており、簡単な薬の調合が可能であることが24話の予告で明らかになっています。 怪我を避けて通れない鬼殺隊にとって、怪我人の世話や簡単な調合の行うことができる神崎アオイの存在は大きいようです。 神崎アオイの初登場 アニメ 23話 『柱合会議』 漫画 6巻 48話にあたるエピソード。 鬼殺隊の隊士になるべく最終選別を生き残ったものの、恐怖から戦いに出ることができずサポートを行う自分に、思うところがあるようです。 「そんなの関係ないよ 俺を手助けしてくれたアオイさんはもう俺の一部だから アオイさんの想いは俺が戦いの場に持っていくし」 己のことを「腰抜け」だという神崎アオイは、炭治郎のこの言葉を聞いて以降、彼を気にかけるようになります。 候補の中には「胡蝶」、「久世」、「本宮」なども存在していましたが、カナヲは結局「栗花落」を選んでいます。 神崎アオイの担当声優 神崎アオイの声優を担当されているのは、江原 裕理 えはら ゆり さん。 ufotableに所属されており、声優、アニメーションスタッフとして活躍されています。 12で発表された『おへんろ。 ~八十八歩記~』の主役の1人である、ちわ役でデビューを果たしています。 2016年-2017『テイルズ オブ ゼスティリア クロス』では、ノルミン天族、イアン役を務め、2019年『シーサイド荘のアクアっ娘』では、マール役を務められています。 神崎アオイの名シーン・名台詞 神崎アオイの名シーン・名台詞にはどのようなものがあるのか紹介します。

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【鬼滅の刃】優秀なサポーター・神崎アオイとはどんな人物?特徴や登場回は?

神崎葵ちゃん

神崎君の学年が30歳の節目で、聖石矢魔行き組が同窓会をするお話です。 グッドナイト下川視点で、彼がMK5や姫ちゃんなどかつての仲間と再会したり、久しぶりに会う葵ちゃんにドギマギしたりしますが、神 夏 で す。 数年前に流行った『ずっと好きだった』という歌を聴きながら書きました。 歳を重ねた彼らの変わったところ変わらないところ、ワイワイ感を楽しんで頂けたら幸いです。 30歳の神崎君は渋みが出てとてもかっこいいんだろうなーと思います。 あと、夏目が卒業後絶対姿をくらます感、アレ何でなんでしょうね……。 その言葉はずるくて、筋が通らなくて、言わない方が平和で……でもだからこそ、とびっきり甘く切実に響いた。 離れてからは九年経つが、盆と正月はまめに実家に顔を出している。 暮らす街ではなくなってからも恩義を尽くしてきたのだ。 オレの街はここであること、誰にも文句は言わせない。 「石矢魔高校聖石矢魔クラス同窓会にご参加の方でしょうか」 「は、はい」 勝手知ったる庭にも、足を踏み入れたことのない場所がある。 都会とは呼べない中途半端な街に場違いにそびえ立つ、この高級ホテルがそうだ。 新しくできたわけじゃない、オレがガキの頃からある。 でもこんな機会がなきゃ、一生縁がなかっただろう、ちくしょう。 「恐れ入りますがお名前を頂戴してもよろしいですか」 「し、下川です、すんません」 何で謝ってんだろうオレ。 値踏みするような眼の受付の男に頭を下げながら、すぐ調子乗るくせに小心者なんだから、と笑われたことを思い出していた。 「うおーい下川久しぶりじゃーん!」 「うっわびっくりした! 碇か!」 まだ始まっていない会場で所在なくしていたら、いきなり後ろから背中をはたかれた。 ふり返るといたずらっぽく笑うなつかしい顔。 碇だけじゃない、MK5の面々が代わる代わる肩に腕を回したりどついたりしてくる。 「専門出てから下川お前全然連絡よこさねーんだもん」 「フフッ、さみしかったかい?」 「「「「「いや別に」」」」」 「空気読めよ相変わらずだな!」 「お前だって相変わらずキモイっつの! 県外出たんだっけ、何してんの」 「あー、営業?」 「キキッ、なんで疑問形よ。 つーかオレ達もみんな営業だぜ」 「えっそうなの」 「……高校で土下座し慣れたから、って噂ある」 オレ達の頃の石矢魔生、外回り営業率高いらしい。 真顔で言われて思わず納得してしまう。 そんな風に近況を教え合っていると、しだいに人が揃い始めた。 隅ではレッドテイルが集まってはしゃいでいる。 色とりどりのワンピースが華やかだ。 「お、そろそろ始まんのかな」 「……そうだな」 「オーイ下川さっきから何きょろきょろしてんだよ」 「え? あ、いや緊張するよやっぱり、こんなとこ来ないし」 「だよなー、姫川サマサマだよな」 噂をすれば、とマイクの前に主催が現れたことで、とっさのごまかしは突っ込まれずに済んだ。 居住いを正すふりでさりげなく、ポケットに手を入れる。 「あー、今日はそれぞれ忙しいとこ集まってくれたことに感謝する。 代わりっちゃなんだが、好きなだけ飲み食いしてってくれ」 「姫川先輩まだその頭してんスかー?」 「おー花澤、相変わらずパーな顔してんな。 さすがにリーゼントじゃ社長はできねえのよ、今夜だけ限定復活だ」 さっそく皿いっぱいに料理を乗せた花澤が、復活しなくてもいいのにと至極真っ当な意見を言う。 怒鳴り返す姫川は、昔のかっこうをしているせいもあって、三十歳にはとても見えない。 今回の同窓会はオレの上の学年が三十になる節目で開かれた。 幹事の姫川がどうせなら馴染みの顔ぶれでってんで、聖石矢魔クラスだったメンバーを集めたのだ。 だからオレの学年も花澤の学年も参加している。 「まあお前らも普段は石矢魔の頃のままってわけにはいかねえんだろうけど、今日はそういうしみったれた話はナシだ。 建物破壊以外なら何でも許す。 思う存分学生時代に戻ってくれ、以上」 乾杯はもっと適任がいるから代わる、と姫川が引っ込めば、入れ換わりで壇に上がった姿にどっと笑いが起こる。 なんでオレが、とぼやきながら現れたのは神崎だ。 髪を黒くしピアスもなくてだいぶ落ち着いたが、ぶすくれた表情にガキ大将の名残がのぞく。 「ちっ、めんどくせえな……オラ全員グラス持てグラス。 あー、会場壊すのだけはあいつマジでべそかきやがるからナシだが、それ以外思いつく迷惑は全部かけてやろうってことで」 おー! とこんな時だけ一致団結する面々に、ふざけんなと姫川の半ば本気の罵声が飛んだ。 けちくせえな、なんて神崎は笑って自分のグラスを持ち上げる。 「つーわけで乾ぱ……ってあっオイてめえ!」 音頭が直前で放り出され、全員ずっこける。 神崎はグラスの中身がこぼれるのも構わずステージを飛び降り、会場の入り口まで駆け出した。 姫川が苦笑いでとり直した乾杯に合わせながら視線を送れば、ひょろ長い男が神崎に胸倉をつかまれ揺さぶられている。 ごめん許してと眉を下げる表情には覚えがあった。 ああ夏目か、肩まであった髪があごのあたりで揃えられてるから一瞬わからなかった。 ていうかあいつ若すぎだろ、学生にしか見えなくて、その変わらなさはうらやましいより心配になるような感じだった。 「夏目って高校出てからずっと行方くらましてたんだって」 「へー……」 遠くでも眼を引くふたりを眺めてたら、嶋村が少し背伸びして耳打ちしてきた。 姫川が無理やり引っ張ってきたらしい、十年以上ぶりの再会。 神崎が怒るわけだ。 「……いなくてこんな騒ぎになるの、さすがだよな」 「なんだよ下川、ブルーかよ」 「いやマジで、だって君ら今日オレ来なくてもあーそうなんだってだけでしょう」 「「「「「まあな」」」」」 「そこは空気読んで否定しよう!?」 神崎に怒鳴られるままの夏目に、城山がつかつかと歩み寄る。 助けて城ちゃん、とふざけるも無言で頭をぶん殴られていた。 いつの間にかステージを降りた姫川は、花澤や谷村をからかってにやけている。 その横で東条が一心不乱に料理をタッパーに詰め、相沢と陣野に苦笑されていた。 聖石矢魔クラスは三十人近くいて、どうやらほとんど来ているようだが、盛り上がりの中心はやはり華やかな退学組の連中だ。 「……働きアリの法則って感じだよな」 「下川がおかしくなったぞ! 飲ませろ!」 君らね。 働くか働かないかならほぼ全員が働かないアリだが、そういうことじゃなくて。 テレビで見たことある、アリのグループは8割が働きアリで、2割がさぼるアリ。 そのさぼるアリだけを取り出すと、その中の8割が働き始め、2割はやっぱりさぼる。 またそのさぼるアリを取り出せばやっぱり8割が……そのくり返し。 石矢魔にいるうちなら、オレは辛うじてその他大勢じゃなかった、2割にぎりぎり滑り込めた。 けどその2割だけが集められた聖石矢魔クラスでは、その他大勢だった。 神崎とか夏目とか……男鹿とか、それでも2割の中でもやっぱり2割になれる奴ってのはいて、そういうことを認めなきゃならないのがオレはちょっと嫌だった。 どんどん網目が大きくなるふるいのことを、ふるい落とされる自分のことを。 石矢魔のままだったらよかったのに、と思うこともあった。 けど、聖石矢魔になってうれしいこともあった。 「あっ姐さん!」 大森の声に思わずびくりと肩が跳ねる。 入口に佇む深いブルーのワンピースの姿は、遠くでも輝いて見えた。 「邦枝なに立ち止まってんだ、とっとと入れよ」 「う、うるさいわねっ」 「って何で姐さん男鹿と来てるんスか!」 続いてふてぶてしい下級生が顔を覗かせる。 どういうことだよ、もしかしてそういうことかっと一気に会場がどよめきたった。 「ちっ、違うわよ変な誤解しないで! あたしたちは偶然そこで会っただけで、ねえ男鹿!」 「おー、オレは……」 「皆さん安心して下さい、男鹿はオレと来ました!」 邦枝先輩とは何もありません、とどや顔で主張する古市に、ふざけんな、お前はほんとしょうもねえなとなぜか非難が集中する。 ひと通り古市をけなし終わってみんな満足したのか、葵ちゃんはレッドテイルに、男鹿達は東条や姫川の輪へと混ざっていった。 なめらかな素材のワンピースに浮かび上がるきゃしゃな腰のライン。 さらさらの黒髪は結いあげて、覗いた首筋はうっすらと赤らんでいた。 昔のかたくなな感じが取れてやわらかくなった横顔。 でも浮ついた誤解が簡単にとけてしまったこと、こっそり残念がるようななつかしい表情が浮かんでいる。 ああ、君はやっぱり。 「邦枝なんか色っぽくなったなー」 「オイオイ葵ちゃんをそんな眼で見る奴はオレが許さないぜ?」 「よく言うよ、下川が一番がっついてたくせに」 「そういうのじゃないって」 「へーへー、話してくれば。 せっかくだし」 「いいって、何しゃべっていいかわかんないし」 「グッナイって言えばいいじゃん」 いいじゃんじゃねーよ、会話終わるだろ。 いったいどんなキャラを作ろうとしていたのか、高校時代の自分の気持ちは今となっては全くわからない。 恥ずかしさのポイントはそこじゃないけど、せめてグッモーニンとかハローとかにしておけばよかった。 おやすみなんて別れのあいさつは、ふたりっきりで言えるタイミングなんて結局来ないままだった。 「邦枝先輩、相変わらず綺麗ですね」 MK5と離れ、テーブルに置いた皿に料理を取り分けているとそんな言葉が耳に入った。 顔を上げれば古市が葵ちゃんに話しかけている。 なんか変なこと言ったら殺すぞというような大森達の視線もなんのそのだ。 「そ、そう?」 「ええ、そのワンピースもとてもお似合いです」 葵ちゃんが顔を赤らめながらちらちらと眼を送るのは、褒めてる古市じゃなくてその隣だ。 あさっての方向を向いて間抜け面でメシ食ってる男鹿。 ほっとしたようにがっかりしたようにつく深いため息が好きだった。 切ない片思いをしているのはこの世に自分だけみたいな。 その眼が自分を映さないこと、悔しかったけど、その間だけは彼女を見つめることが許された。 ずっと見ていた。 「ただ丈が長くて太ももが見えないのが残念です。 相変わらず細いんですか、 それともむっち」 真顔の変態発言は大森の鉄拳制裁で遮られる。 オレががっついてたなんて濡れ衣もはなはだしい。 変な眼で見る余裕なんて全然なかった。 聖石矢魔に移ってその他大勢に格下げになっても、うれしいことはあった。 葵ちゃんの前の席に座れたこと。 生真面目にシャーペンを走らせる音や、時々手を止めて伸びをする気配なんかにいちいちどきどきして、もともと興味のない授業はますます耳に入らなかった。 いくつもの段階をすっ飛ばして付き合ってとか何度も言って困らせたけど、それで伝わるなんて思っていたわけじゃなかった。 前に座るだけで背中がじっとり汗ばむような純情じゃ、眼が合うと焦って普段のきざな台詞なんて飛んで行った。 本当はもっと綺麗だねって言いたかった、ぐきゅうと変な声を上げて倒れ伏した古市みたいに、呆れるほど正直に下心丸出しとまではいかなくとも。 「……っ」 少し遠くから葵ちゃん達を見つめていたら谷村に気づかれた。 何か用ですか、とでも言うように首を傾げるから、何もないよと右手を振って、風に当たりに会場から続きの庭に出た。 [newpage] ガーデンパーティに使われることもあるという庭は散策できるほどの広さだ。 ライトアップは今日は切られているが、代わりにひるむくらい近くて大きい月が冴え冴えと照らす。 酔いざましがてらふらふら歩いていると、誰か話しこんでいるのにはち合わせた。 「びっくりした、神崎くん大人っぽくなってんだもん」 「ぽくじゃなくてとっくにいい大人だろーが。 お前が変わんなすぎんだよ」 夜の庭にワントーン濃い影を落としているのは、神崎と夏目だった。 何やってんの君たちと割って入ってもいけないことはないんだけど、照れの混ざったどこか甘い声音にひみつの匂いを感じてとっさに木陰に身を隠した。 たわいもない軽口からしだいに切なさを帯びていく言葉は詰まりがちで、よく聞き取れないけれど。 「……何でオレ今日、来ちゃったんだろう」 並んで空を眺めていたのを夏目が向き直って、神崎の黒いジャケットの肩口にことりと額を預ける。 困り果てたように苦しげに眉を寄せて、眼を伏せて。 夏目の方がでかいからおじぎをするような姿勢になって、ひどく不格好だった。 いつもひょうひょうとしている、と思っていた。 会場の喧騒は遠く静かな夜空に古いラブソングは響き渡って、弾かれたように夏目が顔を上げかける。 「……ほっとけ」 棒立ちだった神崎が夏目の後ろ頭に腕を回し、ぐっと抱き寄せた。 オレは慌ててボタンを押しメロディーを止めて逃げるように立ち去ったから、 「……ずっと好きだった」 そのしぼり出すような言葉が、どちらのものかはよく分からなかった。 「もしもし、あーうん、そう。 今同窓会、高校の。 うん、すごい豪華なとこ……え!? ないない! だって来週こないだ決めたとこ、本契約しようって話だったでしょうが! いや、ほんと無理だって、オレだって今日初めて来たくらいなんだってば、地元なのに! ね、あー……うん、後でまた電話するわ、おやすみ」 会場でする話じゃなかったから、神崎たちからできるだけ離れて電話に出た。 思いもよらない方向に進んでしまった話にどっと疲れて、切った途端にため息が漏れる。 ふと木々がざわめくだけじゃない気配に気づいてふり返ると、夜風がブルーのワンピースを揺らしていた。 「……葵ちゃん」 「久しぶり。 千秋が、話したいことがありそうだったって言うから探してたんだけど」 谷村の気づかいはありがたいけど、酔っているのか濡れたようにうるんだ真っ黒な眼にまっすぐ見つめられれば、話すことなんてひとつも浮かばない。 古市と同じように、その服似合うねとか? あいつは何もわかってない、少し長めの丈はきゃしゃなひざ小僧を見え隠れさせてぐっと胸が詰まる。 相変わらず綺麗だね? 潔癖そうだった高校時代の横顔も、少しやさしい感じになった今の笑みもそれぞれ綺麗で、まとめてしまうのは乱暴すぎる気がした。 結局口をついたのは、子どもが見かけた看板を片っ端から読み上げるようなひねりのないものだった。 「……月が、綺麗だね」 「何それ」 我ながらもうちょっとくらい気の利いたこと言えよって肩を落としたのに、葵ちゃんはなぜか少し顔を赤らめ、すねたようにうつむいた。 そして突然物騒なことを言い出す。 「死んでもいい、って言ってほしいの?」 「……え?」 わけがわからなくてぽかんとしていると、知らないで言ったの? と呆れて説明してくれる。 昔の人が訳したアイラブユーの話。 そういえばそれこそ高校時代に、たいして盛り上がらなかった話題のひとつで聞いたことがあるかもしれない。 「ごめん、びっくりさせたよね。 そんなつもりじゃないんだ……綺麗だと思ったんだ。 本当に、ただ」 向き合っただけで胸がいっぱいになって、浮かぶ言葉といったらそれくらいだった。 飲み会で浮かれた夜も、上司にむかついた帰り道も、月なんていつだって出ていて、取り立てて綺麗だって意識することなんてなかったのに、ふいに、すとんと落ちるようにそう思った。 「ふふっ、そうね、本当に綺麗だものね……そういえばさっき二次会行くか姫川が聞いて回ってたわよ。 ずっとこっちにいたなら知らないでしょう」 「……葵ちゃんは?」 「私は帰るけど。 どうせ男子だけで盛り上がるんだろうし、寧々たちとも別に行くって話はないし」 「そっか……」 ずっと好きだった。 神崎か夏目かわからないけど言っていた。 突き放す声は聞こえなかったから、言われた方も受け入れたんだろう。 あいつらがどっちも男だということはとりあえず横に置いて、その言葉の意味を考える。 ずっとと言ったけど、それは間に誰も愛することなく思い続けてきたってことだろうか。 それとも誰と付き合おうと忘れられなかったのか。 好きなのに会わなかった十数年には、オレには知り得ないけど会わなかった理由がきっとある。 夏目がどうして来ちゃったんだろう、と言ったように、会わないことで守っていた何かがあるはずだった。 ずっと好きだった。 その言葉はずるくて、筋が通らなくて、言わない方が平和で……でもだからこそ、とびっきり甘く切実に響いた。 「もし……絶対帰らなきゃいけないんじゃなかったら、どっかで飲み直さない?」 ふたりだけで。 上擦る声で念押しすると、葵ちゃんは少しの間眼を丸くした後、ふっとくちびるを上げてほほ笑んだ。 誘っておいてなんだけど、逃げ出せるボタンがあったら連射したくなるほど胸がばくばく跳ねていた。 「そうね……じゃあ、グッナイってしてくれたら考えようかな」 「……っ」 ぎくりとしながら上げかけた右手は、そっちの手で、とぴしゃりたしなめられた。 観念してポケットに入れっぱなしだった左手を、指をそろえてこめかみのあたりに添える。 「……葵ちゃんにはやっぱり、敵わないね」 「ふふっ、おめでとう」 いつかみたいにバチンとウィンクなんてできなくて、ただお見逸れしましたのため息がもれるだけだった。 でもその代わりに、闇にきらりと銀が光ったはずだ。 最後に磨いたのはいつだか思い出せない古いリングでも、きっと。 「正確にはまだだよ。 彼女にはこないだ婚約指輪渡したけど、オレのは付き合いたてに買った安いペアリング」 数カ月分の給料を持って向かった宝石屋。 そのお値段ですと、と見せられたダイヤは、テレビで見るようなものよりずっと小さくてがっかりした。 なんだよ、こんなに頑張って貯めたのにこんなしょぼいのしか出てこないのかよって。 「だからオレが指輪してるとは限んなかったのに。 してなかったらOKしてくれたの?」 「電話してるの、聞こえてたから。 大事にしてる人がいるんだろうなあって思ったの。 彼女、かわいい?」 そのへんの女の子が束になっても敵わないほどかわいい顔で、しかも十数年もずっとかわいいと思い続けてきた男に、そんなことを無邪気に聞く。 葵ちゃんは隙だらけだ。 そんな隙をほっとけないと、愛しいと思ってしまう。 でもほんとのところ大森や谷村なんかがっちり守ってる取り巻きがいるから、そんな思いは男の勝手でしかないんだろうけど。 「いや、葵ちゃんの方がずっとかわいいし綺麗だよ。 でも……彼女はオレのことが好きだ」 小さくてがっかりしたダイヤ。 でも夜景の見えるレストラン、震える手で彼女の指にはめれば、涙が出るくらい綺麗だった。 ていうか本当に泣いて、何であんたが泣くのよって小突かれた。 ずっと好きだった君はオレを好きになることはなかったけど、彼女はオレが好きだ。 すぐ調子に乗るくせに本当は小心者だってことも、宝物見つけたみたいに笑う。 それだけで十分だった。 受け入れられただけで、十分過ぎるくらいに十分だった。 「……素敵ね」 眼を細めた葵ちゃんの表情はほんの少し泣きそうに歪んでいた。 君は幸せになったんだろうか。 それともまだ、オレの後ろの席で隣をちらちら盗み見る、十六の君のままなんだろうか。 あんな鈍感野郎やめちまえばいいのに、そんでオレにすればいいのに。 心の中の君を思う場所は、きっといつまで経ってもゼロにならない。 それでもオレじゃダメなんだろうね。 「あ、お前らこんなとこいたのかよ、探したじゃねーか」 一次会はお開きになったのか、しばらくすると姫川が男子を連れて庭に様子を見にやってきた。 「下川お前二次会行く?」 「あ、じゃあ行こうかな」 「くっ、何だよ慌てて。 なんか聞かれてまずい話でもしてたのか?」 「違うわよ!」 「へーへー、あーそうだ古市、せっかくだからツーショット撮ってやれよ。 下川後で送ってやっから」 カメラ係を押し付けられたらしい古市が、下川先輩見切っちゃっていいすか、と真顔で言う。 本当にやりそうだからやめろ。 じゃあ何かポーズ撮ってください、と促されてまごついていると、隣に並んだ葵ちゃんがいたずらっぽく笑って裏ピースを作った。 「おっ、超レアだぞ邦枝のグッナイポーズ」 「オイ下川何お前が照れてんだ、元祖グッナイ見せてみろって」 「……ハイハイ」 やけっぱちで上げた左手に、予想通り歓声が上がる。 ツーショット撮影はどこへやら、あちこちからコノヤローうらやましいとどつく腕がのびてきて、葵ちゃんは声を上げて笑った。 姫川のリーゼントはもみ合う中で崩れかけていた。 さっきまで苦しそうな顔で話していた神崎と夏目も笑っていた。 どんな眼で見ていいかわからなくてまごついていると、様子に気づいた夏目が言いふらしたら殺す、と耳打ちしてきて背筋が凍った。 城山が胴上げをするのはどうだろうか、と完全に酔ってすわった眼で提案して、タッパーを放り投げてよっしゃ、と腕まくりした東条に、相沢と陣野が相変わらずだな、と呆れていた。 男鹿は興味なさそうにそのタッパーの中の料理をつまんでいて、古市もお前なあ、とため息をつきながら手を伸ばしていた。 「グッナーイ! グッナーイ!」 誰が言い出したのか、バンザイでもワッショイでもなくグッナイでオレは宙に放り上げられた。 力自慢の男たちの胴上げはバカみたいに高くて、綺麗な月まで届きそうだった。 よしじゃあ撤収二次会移動! と唐突に落っことされるのもお約束で、でも不本意ながら地面を這うのは慣れている。 スーツについた土をはらって、オレも今夜は飲もう、君は帰ってしまうけど。 酔っぱらって電話するのが遅れたら、彼女は怒るだろうな。 でもこの分不相応にもほどがあるホテルで、結婚式上げてみたいなんておねだりを叶えるべく姫川に交渉してみよう。 もちろんお友達割引で。 帰ったら月が綺麗だねって言ってみよう。 君と見る月が一番綺麗なのは墓までひみつにして、アイラブユーって伝えるために言ってみよう、彼女に。 どこで覚えてきたのって、笑われるかな。 [newpage]長いお話をここまで読んで下さりありがとうございました。 もしよろしければ簡単なアンケートを設置しましたのでぜひご協力頂けると幸いです。 fc2.

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